秘密の鎖

…………はっ。




「うっそ!」


私はゴロゴロしてるうちにいつの間にか寝ちゃったらしく、
窓の外はもう真っ暗だった。



え~~っ!?


今日、何もしてないよ?

いくらなんでも寝すぎでしょ私!


とっさに時計を確認する。

7時すぎ。


やばいっ、夕月さんそろそろ帰ってくるんじゃないの!!


夕飯まだ作ってないよ~!


ドタドタとソファやテーブルにぶつかりながらキッチンへ行き、
あわあわと鍋やら何やら取り出していたときだった。



ピンポーン



誰か来た。

…誰?
夕月さんかな?

いや、夕月さんだったら勝手に入ってくるはず。

っていうか、勝手に出ていいの!?


私は恐る恐るドアを開けた。



目の前には、ふわふわゆる巻き髪の美人で、なんていうかお嬢サマっぽい雰囲気の人が立っていた。


私は『お嬢サマ』を見つめてポカンとした。


『お嬢サマ』もポカンとしていたが、
それは一瞬のことで、さっと笑顔を作った。


「こんばんは。夕月さんいらっしゃいます?」


私もアホみたいに開けていた口を一度閉じてから、
何の意味もなく家の中を振り返った。


「え…と…まだ帰ってないみたいなんで…す」


そうなんですか、と『お嬢サマ』は視線を少し下に落とした。


「伝言しておきましょうか?」


私がそう言うと、『お嬢サマ』はいえいえと慌てて手を振った。


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