秘密の鎖
遅い。
もう夜の10時をまわっている。
いつもならもうとっくに帰ってきてるのに。
ケータイを確認しても、メールも着信もナシ。
一切連絡ナシっ!
イライライライラ
今どこにいるんだろ?
はっ!まさか事故に巻き込まれたりしてるんじゃ……
まさかまさか!?
私は焦ってバタバタと頭の上に手をやって
部屋中をぐるぐる回った。
なんだか夫を心配する妻みたいだ、
なんてバカみたいなことを思いながら、電話してみようとケータイを手に取ったとき。
そこでピンときちゃったのだ。
ピンとこなきゃよかったものを。
「カノジョ!」
もしかして彼女の家にいる…とか?
だったら電話とかしたらまずいんじゃないの?
もしいいムードだったりしたら雰囲気ぶち壊しなんじゃないの?
ああ~っ、でもでも!
ピリリリリー
ビクッ!
もんもん考えている真っ最中に電話がかかってきて、体をこわばらせた。
…夕月さんだ。
「もしもし…」
「ビィちゃん、こんばんはぁ」
は?
ビィちゃん?
受話器から聞こえてくる夕月さんの声に耳を疑った。
「今バス停。もー少しで帰ってくるからね」
「………」
「じゃ、あとでー」
「………」
プツッ……
ツーツーツー……
ボトリ。
手から滑り落ちたケータイが床の上でスリップした。