秘密の鎖

だ…だれ?
いまの…?


ゆゆゆづきさん?


もしかして酔ってんの?


しばらく硬直してつっ立っていると、玄関のほうでガチャリと音がし、我に返って急いで出迎えた。


「ただいま」


ほっ。


にこりと笑ってそういう夕月さんは、
いつもの夕月さんだった。


「夕月さんがあんまり遅いから、ご飯冷めちゃいましたよ」


何かの間違いだったんだ。
うん、そーだよね……って!


「何抱きついてんの!」


体に巻きついてくる夕月さんの腕をひっぺがして叫ぶと、
夕月さんはきょとんとした。


「なんで?」


「なんで!?」


私は夕月さんをまじまじと見た。

ちょっとトロンとしている目に、うっすらと赤い頬。
ゆるくなってるネクタイ。

抱きつかれたとき、少しお酒のにおいがしたかも。

やっぱり酔ってる!!


「夕月さん、とりあえず…シャワー浴びたほうがいいよ」


なんとかして少しでもアルコールを抜かねば!

そう思って手を引っ張って浴室の前まで連れて行ったときだった。


「ビィも一緒に入りたいの?」


なんて声がしたから、浴室に夕月さんを突っ込んでバターン!とドアを閉めた。


セクハラオヤジーッ!!
(オヤジじゃないけど)


酔っ払いは恐ろしい、と心の中で叫びながら、自分の分の夕飯は温めて夕月さんの分にはラップをかける。



飲んできたくらいだし、食べないよね。


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