秘密の鎖
「ああ、待った。食べるからそのままにしといて」
振り向くと、
早々とシャワーを浴び終えた夕月さんが立っていた。
髪が濡れてペチャンコになっている。
犬みたい。
「え、食べるの?」
驚いて目を丸くすると、テレビをつけて、チャンネルを変えながらうんうんと頷いている。
部屋に別世界の色と音がサッと広がった。
ラップを外し、電子レンジで温めてあげた。
「食べてきたんじゃないんですか?」
時計を見つつ問いかける。
時間も時間だし、まさか食べるなんて思わなかった。
「食べてきたよ。でもお腹すいたから」
言いながらさっさと椅子に座って食べようとする彼を、うそでしょ!?って顔で見た。
「うーそ」
「え?」
夕月さんは口端を上げた。
「せっかくビィが作ってくれてんのに、食べないわけにはいかないだろ」
ドッキューン!
って。
何か刺さった。
胸に。
私はフラフラと壁に手をついた。
この人、わかってて言ってんのかな?
そんなこと言われちゃったら誰でもときめいちゃうよ…
酔ってるせいかな、きっと。
もくもくと食べている夕月さんをチラリと盗み見る。