秘密の鎖
「なんで怒ってんの?」
コーヒーカップに口をつけながら首をかしげる夕月さん。
私は挨拶はおろか、今朝はひと言も口をきいていない。
無言でコーヒーを差し出しただけ。
「ねぇ、ビィってば」
夕月さんが困った声で話しかけきても、
ツンとそっぽを向く。
「俺、何かした?」
何かした?ですって?
したよ!
私のファーストキスを奪ったよ!
「私、初めてだったのに!」
「何が?」
はい?
私は夕月さんの顔をまじまじと見た。
夕月さんはきょとんとした顔をして私を見つめている。
…え?
ちょっと待って、まさか………
「……覚えてない…?」