秘密の鎖

「なんで怒ってんの?」

コーヒーカップに口をつけながら首をかしげる夕月さん。

私は挨拶はおろか、今朝はひと言も口をきいていない。

無言でコーヒーを差し出しただけ。


「ねぇ、ビィってば」

夕月さんが困った声で話しかけきても、
ツンとそっぽを向く。


「俺、何かした?」



何かした?ですって?

したよ!
私のファーストキスを奪ったよ!



「私、初めてだったのに!」


「何が?」




はい?




私は夕月さんの顔をまじまじと見た。

夕月さんはきょとんとした顔をして私を見つめている。





…え?










ちょっと待って、まさか………














「……覚えてない…?」


< 76 / 230 >

この作品をシェア

pagetop