秘密の鎖
「目、ちゃんと瞑って」
夕月さんの手が動くたび、私の心臓のドキドキは速くなる。
目なんて、開けられるはずがない。
夕月さんの視線は、私の顔だけに注がれてる。
そう考えただけで、顔が真っ赤になりそうなのに、目を開けたりなんかしたらきっとどうしようもない。
当然夕月さんの口数も少ないこの時間、ただ黙ってされるがままになるしかなかった。
たまにかかる吐息に顔の近さを感じて体をこわばらせたりする。
リップを塗るためだってわかってるのに、夕月さんの指が私の唇をそっとなぞるとゾクリとした感覚が唇から走った。
「―――はい、できた」
「いだっ」
なぜか最後にデコピンして夕月さんがそう告げた。
終わってしまったのが名残惜しいけど、出来栄えを確認するために目を開けて鏡を見る。
どうせ、めちゃめちゃになってて私が怒るのがオチ――――――
そう思いつつ鏡を見た私は、ただ鏡の中の自分を口を開けて見つめるしかなかった。