秘密の鎖
大人っぽい雰囲気に包まれたホテルのレストラン。
注文は夕月さんにおまかせして、私はその場の雰囲気を楽しんでいた。
ちらちらと壁にオレンジ色に灯る、蝋燭をモチーフにした電灯。
明かりのせいでクリーム色のように見えるテーブルクロスは、ときどきかすかにきらめいた。
「ご機嫌を直していただけましたか?」
恭しく尋ねてくる夕月さんに、微笑みかけた。
機嫌なんか、もうとっくに直っている。
「もちろん。ありがとうございます」
それを聞いて、夕月さんも安心したように微笑んだ。
宝石を散りばめたような夜景に和やかに見入っていると、料理が運ばれてきた。
「わぁ、美味しそう!」
「がっつくなよー」
料理に飛びかかる勢いの私を夕月さんが制した。
「そ、そんなことしませんよ~」
「絶対しようとしてた」
「してないしてない!」
そんなことを言い合いながら食事をしていたときだった。
「…夕月?」