秘密の鎖
女の人の声がし、夕月さんは私の後ろを見て目をまるくした。
「皐月」
…『皐月』
『皐月らら』さん?
私も恐る恐る振り向くと、そこにはいつかの『お嬢サマ』。
微笑む姿はやっぱり人形のように可愛らしい。
「こんなところで会えるなんて思わなかった!」
そう言って嬉しそうに夕月さんのもとにやってくる。
ああ、そっか。
ららさんは夕月さんの彼女なんだっけ。
途端、私の中の温度は急激に下がり、笑顔を作る気にもなれなかった。
「皐月はなんでここに?」
夕月さんの問いかけに、ららさんは困った顔をして答える。
「今日はお母さんの誕生日で来たんだけど、お母さん、急に来れなくなっちゃって」
だから、と言ってカバンを持ち直した。
「一緒に食事させてもらってもいいかな?」
胸が、
わけのわからない痛みに襲われた。
これは何――――?
「でも「いいですよ」
夕月さんが何か言おうとしたのを遮って、私は席を立つ。
「私、そう言えば用事があったんでした。先に帰ってますね」
「ビィ!?」