秘密の鎖

夕月さんが私を呼ぶのが聞こえたけど、振り向きもしないで離れ、化粧室に駆け込んだ。











なんで?



なんなの?



どうして、
こんな気持ちになるの?



鏡に映る私を見る。



滴がひとつ、すっと頬を伝った。



魔法が
とけた



「……帰ろ」


帰って気持ちを落ち着かせよう。



なんか私おかしい。



家に帰って、お風呂に入って、さっさと寝て…


「ひゃ!?」
「おわっ」


化粧室から出ると、背の高い男の子にぶつかってしまった。


「…っ、ごめんなさい」


知らない人にこんな顔を見られたくなくて、あわててその場を離れようとした。


「!?」


……が、腕を掴まれて離れることができなかった。


「あんた一人?」


「え?」


「一人ならちょっと付き合ってくんない?」


そう言ってスマイルを投げかると、私の腕を強引に引っ張った。


「あ、え、ちょっと!」


強引男に引っ張られて、なす術もなく着いていった。


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