秘密の鎖

「なんなの?」


連れ込まれたのはこのホテルの一室。

そして相変わらずスマイルなこの男。


「そういうお相手なら、他に頼んで下さい」


そう言ってドアノブを掴もうとすると、その上から手を掴まれた。



……出れない。


「だからなんなのよっ!」


イライラしながら見上げると、さっきまで笑ってた男の顔が真剣なのに気づいてはっとした。


私の手を押さえていないほうの手がゆっくり伸びてきて、私はビクンと体を強ばらせた。


そっと、私の頬に指を滑らせる。


「泣いてたから」


「え………」


優しい瞳で見てくる男に戸惑った。


「木原が泣いてると、心配で」


優しく頬を撫でる手に、そっと目を瞑った。


優しい手。



気持ちいい。






…………って、ちょっと待った。



ぱちっと目を開けて、目の前にいる男をまじまじと見た。


「ねぇ、今何て言った?」


そう尋ねると、男はきょとんとした。


「『木原が泣いてると心配』?」


木原!?


私は頬に当てられたままだった手を引き剥がし、飛び離れた。


「何で名前知ってるの!?」


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