秘密の鎖
「あー‥」
男は一瞬、なぜか残念そうな顔をした。
「口が滑ったな。二学期が始まるとともに感動の再開を狙っていたのに」
意味のわからないことをにやにやしながら言っている。
「ね、本当にわからない?」
おかしそうに笑う男に腹が立ったけど、
わからないものはわからない。
「わからないよ。あんたなんか知らないもん」
そう言ってつんっとそっぽを向いた。
すると、拗ねた私の頭にぽんと手を乗せてきた。
「正解を教えてあげようか、お嬢さん」
その言葉にさっと男の方を向き直った。
……のが、間違いだった。
「…んんっ!?」
急に視界が暗くなり、唇に違和感。
押しあてられたのは、やはり柔らかい唇。
一度離れたかと思うとまた降ってくる。
目の前には、目を閉じた男の顔。
たまらなくなって、何度目かわからないキスの途中で突き放した。
「……っはぁ!」
やっと満足に息を吸えた。
男はふぅ、と言いながら汗なんかかいてないくせに、額の汗を拭うフリをした。
「危ない危ない、ごめんね」
「何が『危ない』のよ!思いっきり襲ってるじゃんっ」
バチンッ!
ムカツク男の発言に、私は言い終わるか終わらないかのうちに男の頬を平手で叩いた。