秘密の鎖
「でもさ、泊まってくよね?」
は?
って顔で綾香を見た。
「あいつ、女といるじゃん」
「……」
思わず黙り込んだ。
そうだ。
夕月さんはららさんといる……もしかしたら、今夜は一緒にいたいかも。
沈み込んだ私の肩を、綾香は笑みを浮かべて叩いた。
「ね、ここに泊まるよね?」
「私を狙ってる野獣がいるのに泊まるわけないでしょ!?」
肩に置かれた手を払いながら叫んだ。
綾香はいやいや、と首を振った。
「襲ったりしないよ」
「さっき襲った」
「あれはあれ。ただのキス」
ただのキスー!?
こいつどういう神経してんの?
てか、そういえば……
「……なんでここに泊まってんの?」
そう尋ねれば、意味深な笑みが返ってきた。
「言わなくても、わかるよね」
こいつ………!
「今日はナシになったから、安心していいよ」
「帰るから!」
そう言って立ち上がると、腕を掴まれた。
今日何度め!?
「絶対襲わないって誓うよ。これ以上嫌われたくないし」
「嘘だ」
「ほんと」
そう言ってにこって笑う顔にちょっと惹かれた。
黒いサラサラの髪が揺れた。
「嫌がる女を抱くのは趣味じゃないんだよね」
「………」
(どう反応したらいいわけ?)
とりあえずひきつった笑顔を見せてあげた。