いちごの恋~恋した相手は先生~
「沢渡と土井が、仲良くなきゃ・・・陸上部じゃねぇよ。」
ポケットに手を入れて、胸をそらしながら…
空に向かって呟くように言った。
溢れる涙が、自分でもどうしても止められなくて、私は声を上げて泣いた。
まさか、先生の前で泣いてしまうとは思わなかった。
大好きな人の前で、鼻水ズルズルで、真っ赤な顔で泣いた。
新垣先生は、おろおろして・・・
急にどこかへ走り出す。
走って戻ってきた先生の手には、ティッシュがたくさん握られていた。
「うぐぐ・・・ふふふふ、新垣先生・・・普通は、ハンカチだよ・・・」
笑う私の頭に大量のティッシュを乗せた。
風に乗って、舞い落ちるティッシュがとても綺麗だった。
「何があったかは、わかんねぇけど、ちゃんと話せば絶対に通じるから。諦めないで、向き合えよ。何か俺にできることがあれば、いつでも言ってくれ。」
落ちたティッシュを一枚拾って、先生は私の鼻に押し付けた。
「ありがと・・・先生。」
涙を拭いた私は、優しい新垣先生の顔を穴があくほど見つめた。
「あ・・・沢渡。それから、言いたいことがあるならはっきり言え。急に無視されたりすると、俺・・・結構気にするタイプだから。はははは!!」
新垣先生は、落ちたティッシュを全部拾って、無理やり私の手の中へ入れた。
新垣先生の言葉は魔法の言葉。
私を笑顔にする言葉。
先生が作る空気っていうか、この柔らかい感じがとても好き。
悩んでたことを全部吹き飛ばしてくれるような
雲の上で転がっているような穏やかな気分になれる。
新垣先生がくれたティッシュは、間違いなく私の宝物になる。