桃園むくげXX歳である。
紅花の君、20歳である。
女の武器は、正しい使い方をすべきである。

円錐はどこから見ても円錐。美しくまろやかなスタイルは、面があるだけ。裏も表もない、光もなければ闇もない。

その美しさに魅了された。

斎院あおい、キャバクラ嬢である。

よろしく。

だが人は円錐のようにはいかない。

複雑な多面体の中に、多彩な面と形をつくり同化したり反射したりしている。

キャバ嬢たちは本当の自分の形を内側に収め、みせかけの図形を展開する。

その図形の多くは、諸兄の憧れる女の形である。だがそんな個性豊かなキャストの中で源氏名コウカの図形は異質である。

暗黒面で構成された双角錐が彼女の形。

キャバ嬢でありながら、彼女はあまり笑わない。不器用、そして特に美人でもない。そしていつも肘上までのロング・グローブをしている。理由は明快。いわゆる、リストカッターである。

一般的に言うキャバ嬢の図形とは異なる。

諸兄とは不思議である。こんなに色香漂う私がいても、話し上手のキャストがいても、こういった影のある女に心惹かれるものも多いのだ。

私が憂い顔をすれば諸兄は札束を積んで三角錐を作ってくれるが、それは望んでいないのである。

紅花の君がため息をしたときのように、話を聞いてあげる、とか、優しい言葉が欲しいのである。

女はこれだから面倒というと、痛い思いをするので気をつけるべし。

構って欲しい時と、そうでない時が頂点と底辺ほどに異なるのである。

しかし彼女が本当に精神薄弱のリストカッターというだけなら、こんな場所にはいないのであるが、諸兄はそこまで気が回るまい。

彼女は私の客の娘であり、客を骨抜きにした私を恨んでいたそうだがそれがキャバ嬢の仕事であって、諸兄が望む色・形であろう。

彼女がそれを理解しても、父親は理解ができなかったようだ。

彼女を使って再び私に近づこうとした父親が、とあるきつい仕置きのおかげで現実を見た。

私と父親、板挟みの事情から解放されると、腕の傷は止まり暗黒面で構成された双角錐が形を変えた。

笑顔が一番である。

女の武器は、正しい使い方をすべきである。

笑えば意外と可愛い、素朴だがたまにミステリアス。

紅花の君、20歳である。

よろしく。
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