桃園むくげXX歳である。
藤原惟光、24歳である。
男と女の定義とは。

女というものは「まっすぐな人生」か「曲がり角のある人生」か「苦なく滑る人生」の三つである。根拠は「女」という漢字のつくりからである。

しかし心は常に円錐で。棘の形をしてこそ女の心構え。

斎院あおい、キャバクラ嬢である。

よろしく。

男は簡単である。「田」を「力」で耕せばいい。要するに働けということである。

しかし現代というものは、きっぱり「男」と「女」で分けることができない。

あまたの事情や境遇によって「男」の体で「女」の心という非常に繊細な図形をかたどって存在する人間もいるのである。

前置きが長くなったが、今私の目の前ですすり泣きをし梅酒ロックを仰いでいるこの男は、「女」である。

うちの店は女性はドリンク半額であるため、こうして18杯目の梅酒を空にしても売り上げは9杯分ということになる。心は立派な女であるため、会計で男料金で精算をした日にはレジを破壊させられるに違いない。

今でこそ落ち着いているが、店へやってきた時は一体どこの暴れ牛が飛び込んできたかと思ったほどである。入店と共に私を怒号と共に指名である。

彼女はホストクラブロイヤルのNo.1に恋をして、その心と体のバランスゆえに歩き出せないというのである。

No.1に言い寄って子供を作り、コバンザメしていると勘違いされている私に恨み辛みを言いにやってきたというのだが、事情を共有して今はこんなに仲良しである。

「忘れられないの。何でもしちゃうの、また店にも行っちゃう。でも見てるだけで辛いの」

男らしい横顔を涙にぬらし、20杯目の梅酒ロック。
相手が悪いというしかないが、恋する様はまこと女の鏡である。そっと背中を撫でてやる手にも力が入るというものである。

「あおいちゃんもう一杯付き合って、あと歌うわよ。私、諦めないから」

タフで無ければ保てない図形の一面を輝かせて、彼女は「ただ女でいるだけの女」達を勇気づけさえするのである。

男と女の定義とは。

その定義をさらにして個体の素質を評価ができるここ、歓楽街。

ピアスは大ぶりディオール

キャバクラで楽しく女子トーク。イケメンホストに片思い

純真乙女

藤原惟光、24才である。

よろしく。
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