桃園むくげXX歳である。
桃園むくげ、18歳である。
至極、当然である。

円錐という形に究極美を見いだして、異常なくらいに恋をした。

高校では金管楽器の円錐状のラッパが気になり吹奏楽部に所属。
将来は円錐ピラミッドを彼と見に行くのが夢になったのだが
その彼は一体誰になるのか。

自然界にある円錐すべての伴侶

桃園むくげ、18歳である。

よろしく。

こうして私が右頬を真っ赤にして、とぼとぼと校内を歩いているのは
校舎裏の竹林をつっぱしって虫に刺されたからではない。

クラスという籠の中で飛び回る蚊に、チクリと指されて腫れているのだ。

人の血を吸うのはメスだけである。

焼け木杭に火がついたと言われそうだが
昔ちょっと仲が良かった彼にウィンク1つ投げただけでこのザマなのである。

でる円錐──いや、でる杭は打たれると、故人がいうのだからしょうがないのかもしれない。

普通は打たれた杭は土中を分け入り深く沈み、他の杭たちと同じ高さまで揃えられると考えるのだろうが──
それは底辺が空にこんにちわをしている時だけだと、あの蚊は知らない。

桃園むくげ、これでも美貌とともに
そこそこプライドを持ち合わせているのだ。

身分制度が美しい円錐の形をもって成り立っていたことは、それが完璧に美しい構造だと先駆者たちが知っていて、そして合理的だったからであろう。
つまり階級を越え、分をこえた仕打ちには、ふさわしいお返しをせねばなるまい。

18歳の冬の終わりに
高校の裏で同級生の死体が見つかった。
雪で足場を見失ったのか大きな穴に落ちたのだ。
穴の底には伐採された竹が放り込まれており
不幸かな、するどい杭が体を穿って失血死したそうだ。

杭を打てばその鋭いきっさきが
牙をむくのは至極、当然である。

彼は、再び私の左手を優しく握りしめている。

改めまして

桃園むくげ、18歳である。

よろしく。
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