完━あなたは、敵━<先生との恋・スピンオフ作品>
「今日は先客がいまして。こっちの席に座ったんです」
あたしと同じようにいつもの席の方を見ながら話してくれる。
真っ黒で自然な感じで後ろに流されている髪。
スーツを着ているって事は……普通は休日なのに仕事が入ってたのかな。
さりげなく香る爽やかな匂いも良い。
「……向こう、集中できますか?出入口に近いから人の出入り激しいですよね」
向こうの席のほうが日光が程よく当たって気持ち良さそうだけど、人の出入りが激しい。
騒がしくて集中できないから……とあたしはこの席がお気に入りになったんだ。
「そうですね、この席の方が落ち着きます。今度から、ここの席にします」
そう言ってニッコリ笑ったその人は、視線をパソコンへと戻そうとして「……あ」と思い出したように呟いた。
何かと顔を見ると、髪同様真っ黒な瞳があたしを映していて。
「名前……教えていただけますか?」
「あ、小村です」