完━あなたは、敵━<先生との恋・スピンオフ作品>
一瞬だけ、目があった三浦さんは驚いたような顔をしていた。
あたしは、次の瞬間にはエレベーターを飛び出して走りながらホテルの出入口を目指していた。
コツコツ音が響くヒールの音。
ギュッと手のひらを握ると、持っていた関谷さんの車のキーが皮膚に食い込んで痛かった。
だけど、それよりも……三浦さんに言われた優しさの欠片も無い言葉の方が断然痛かった……。
車に乗ってからも、上手く息が吸えなくて。
涙は止まらないし、酸素を取り入れようと思っても、横隔膜がおかしくて吸えない。
挙句に手が痺れてくると言う始末。
……ただ必死に落ち着け、落ち着け、と心の中で繰り返し。
息が上手くできなくて流れているのか、悲しくて悔しくて流れる涙なのか分からない涙を流し続けた。