君に恋した。
涙が、ポロポロと零れ落ちる。

胸がキュッとする。


しばらくして、1Fから声が聞こえてきた。
「ん…?美奈…?」
ソファーの音がしたから、多分起きたんだろう。
「あれ?」
私は、涙をぬぐってフードを深めに被った。
「日向・・・、もう大丈夫なの?」
「え…?まぁ。
 ありがとう。美奈。」
日向は、ニッコリと笑顔を浮かべた。
無邪気な笑顔。胸の奥が熱くなる。
(笑わないでよ…。)
「…。そっか。」
「うん。」
「じゃあ、帰って?」
(帰ってもらうしかない。こんな顔見せたくない。)

私は、日向の背中をポンと押した。
「お…おぅ。」
日向は、玄関で靴を履くとドアノブに手を掛けた。
カチャっと、ドアを少し開けるのと同時に、日向は振り向いた。

「え…?どうしたの?」
「美奈。」
「ん…?」

「泣いてない…か?」

日向が心配そうな顔で言った。
どくんと胸が高鳴る。
図星だ。
(やだ…!絶対悟られたくない!)

目を合わせず、声だけ元気に言った。
「大丈夫だって…!」
「ホント?」
「大丈夫だって…ば!」
「そっか…。」
「うん…。」

「でも…。」
日向は、こっちを見つめて言った。
「もし、美奈が辛いなら。
俺は、美奈の隣で支えてやりたい。」

「アハハ…、冗談はいいよ?」
「冗談じゃ…ねーよ。」
「…。」
(違う、コレは…、友達としてだよ?)

「俺でいいなら…だけどな!
じゃあ、ご迷惑おかけしました!」

そういって日向は、玄関の向こうに消えて行った。
姿が見えなくなった瞬間、崩れ落ちるようにその場に座り込んだ。

「…っ。ひっく…。うっ…。」
貯めていた涙が、一斉に零れ落ちる。

「日向…、好きだよ…。
 でも、日向には…」

ひかるさんが居るじゃんか。
優しくしないでよ。
余計辛くなるだけだよ。

好きになるじゃん。


もっと好きになっちゃうじゃん。

日向、なんで優しくするの?
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