君に恋した。

4月‐後半

あの日から、日向とは喋っていない。
数日たったけれど。
そして私はと言うと。
今、昼休みで、ぼーっとあの時の事を思い出している。
「美奈?どうかしたの…?」
愛が心配そうな顔で聞いて来た。
「え??何も無いよ?」
「でも、顔色悪いよ?」
「あ…。そうかなぁ?」
「うん、もしかして…、日向君と何かあった?」
心臓がドクンと高鳴った。そうだ、その通りだ。
「あ…、う…ん。」
最後の方は、ほとんど聞こえないくらい小さくなってしまった。
「え?」
愛が言うのと同時だった。
「日向ぁ~♪」
大きな声が、教室に響いた。
ふと、声のした方を振り返る。
「え?梶原?」
「日向ぁ~♪」と呼んだのは、梶原だった。
日向は、ミュージックプレイヤーをかけている。
「ね、ね!日向ってばぁ。」
「何だよ?」
「明日、どっか出掛けない?」
「あ?」
「例えば、映画館とか?」
梶原は、エヘッと微笑んだ。
日向は、梶原の方をチラッと見て、ふぅとため息をついた。
「分かったよ。
…考えとく。」
日向はそれだけ言って、教室を出て行った。

梶原が、日向の後ろをぴょこぴょこ着いて行く。
(なんで…?)

なんで否定しないの−−?

違うって、言わないの?

頭のてっぺんから爪先まで、まるで時が止まったかの様に、硬直している…。
「美奈?」
愛の声が聞こえた。ハッとして我に戻る。

(私ッ…今、何思ってたんだろう…。彼女でも無いのに…。)

そうだ、私は日向の彼女でもなんでも無い。
うん。
『友達』なんだよ…。
「ちょっと、来て。」
愛が、いきなりガタッ椅子から立ち上がったと思えば…。
今度は私の手をぐいぐい引っ張って行く。
「わ!?え!?ちょ…ちょっと!!愛!?」
愛は、私が驚いているのも、構わずケータイで誰かと話している。
「樹、悪いけど…来て!!」
所々、聞きとれない部分はあったものの、誰かを呼び出して居るみたいだ。
「あ…い??」
私は屋上に連れて行かれた。
「行ってきな…。」
愛は私の背中をポンと押した。
そーっと、恐る恐る屋上の扉を開けた。
「あのぅ…」
「その声…。」
男子の声が響く。
あぁ、これは紛れもなくあの人だ…。
低い、カッコイイ声。
この声は、絶対あの人。
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