コットンキャンディドリーム
一章
叶うことを夢見ることさえ、できなかった。
綿菓子みたいに甘い余韻を残して、はかなく消えていく恋だと思い込んでいた…。
「離せよ!」
背後からいきなり腕を掴まれて引きずり込まれた路地裏で、俺はサラリーマン風の男ともみ合っていた。
深夜零時を回った静まり返った通りに、俺の声だけが響いている。
かなり酔っぱらっているらしいオジサンを相手に、俺の分が悪いのは、大学生の男子としては小柄な165センチという身長と貧弱な体格のせいばかりでなく、タイトなミニスカートにパンプスというきわめて動きにくい服装のせいだ。
そう、つまり俺は女装している。
別に、何かの罰ゲームとか、誰かに強要されているとかでもなく、ただ、単に趣味というか、気晴らしというか。
初めて女装したのは、高校生になったばかりの頃だった。
あの頃の俺は、コンプレックスの塊だった。
男らしさには程遠い体型や、丸い大きな目が目立ってしまう女顔が嫌で嫌で。
その上、ちょっとでも男くさくなりたくて入った男子校では、引っ切りなしに同級生や先輩からコクられ、遂に、俺の中で何かが壊れた。
別の誰かになりたい!それが、女装に走ったきっかけだった。
自分で言うのも何だが、元々の容姿が容姿なだけに、女装した俺は、かなり可愛い。
そこらへんの女の子を敵に回すくらいに。
女装した俺を見て、男だと気づく奴はいないし、ましてや俺だとわかる奴はいなかった。
綿菓子みたいに甘い余韻を残して、はかなく消えていく恋だと思い込んでいた…。
「離せよ!」
背後からいきなり腕を掴まれて引きずり込まれた路地裏で、俺はサラリーマン風の男ともみ合っていた。
深夜零時を回った静まり返った通りに、俺の声だけが響いている。
かなり酔っぱらっているらしいオジサンを相手に、俺の分が悪いのは、大学生の男子としては小柄な165センチという身長と貧弱な体格のせいばかりでなく、タイトなミニスカートにパンプスというきわめて動きにくい服装のせいだ。
そう、つまり俺は女装している。
別に、何かの罰ゲームとか、誰かに強要されているとかでもなく、ただ、単に趣味というか、気晴らしというか。
初めて女装したのは、高校生になったばかりの頃だった。
あの頃の俺は、コンプレックスの塊だった。
男らしさには程遠い体型や、丸い大きな目が目立ってしまう女顔が嫌で嫌で。
その上、ちょっとでも男くさくなりたくて入った男子校では、引っ切りなしに同級生や先輩からコクられ、遂に、俺の中で何かが壊れた。
別の誰かになりたい!それが、女装に走ったきっかけだった。
自分で言うのも何だが、元々の容姿が容姿なだけに、女装した俺は、かなり可愛い。
そこらへんの女の子を敵に回すくらいに。
女装した俺を見て、男だと気づく奴はいないし、ましてや俺だとわかる奴はいなかった。