ココロ カラダ カケラ
「…冴木さん?」

不意に名前を呼ばれ、京子はゆっくりと目を開けた。

「…松下先生…」

京子は自分を覗き込んでいる科学教師を見、小さく名前を呼んだ。

「あぁ、びっくりした。一瞬死んでいるのかと思いました」

「勝手に殺さないで下さい。…目を閉じていただけです」

「わかってますよ。言ってみただけです」

にこにこと笑う男に、京子はやりにくそうな顔をする。

京子はこの化学教師が苦手だった。
端正な面立ちと、柔和な笑顔で女子生徒の心を掴んでいるのだが、彼女にはその笑顔の裏にあるものが見えてしまった。

自分と似ている…。

それが松下、という男に対する京子の評価であり、それは十分に、彼女にとって警戒すべきことだった。




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