ココロ カラダ カケラ
松下は京子の隣に座ると、ポケットからタバコを取り出した。

「松下先生、ここは禁煙です」

「絵に書いたような優等生じみたセリフはやめて下さいよ。実際、冴木さんは優等生ですけど」

「先生こそからかうのはやめてください。吸おうが吸わまいが先生の勝手ですけど、煙は向けないで下さい」

「それは黙っていてくれると言うことですか?」

「誰かに言って、私に得はありませんから」

京子がそう言うと、松下はにっこりと笑って彼女へタバコの箱を差し出した。

「…なんですか?」

「一本いかがですか?」

京子は眉を寄せて顔をしかめた。
彼女の嫌そうな顔を見て、松下は苦笑する。

「…タバコはね、思考を止めてくれるんですよ」

ぴくり、と京子の肩が揺れた。

「僕は何も考えたくないとき、疲れた時に一本吸っています」

松下は静かな声で続けた。

「見たところ、行き詰まっているようですから。一本だけ、どうですか?少しは楽になるかもしれませんし、こういう時はいっそ何も考えないのもいいものですよ」

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