ココロ カラダ カケラ
「関係ないことはないですよね?僕は君の逃げ場みたいなものですから」

「うるさい。ただ単にわかんない問題があっただけよ」

京子はそう言うと化学の問題集を開けた。

「それだけですか?」

男はそう言うとにっこりと綺麗な笑顔を京子に向けた。

「…私はあんたが嫌いよ」

京子は思う。
この男に自分の隠している気持ちがばれたのは恐らく、一生の不覚だ。
しかし、それでも彼に頼っている自分は世界一の大馬鹿者だ。

「…冴木さんは損ばかりしていますね」

「そんなこと、今さらよ」

京子の言葉に、男は苦笑した。

「わからない問題…というのはどれですか?」

「…この化学式が作れないの」



それでも。





自分に付き合ってくれるこの教師に、京子は甘えるしかなかった。




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