夕焼け階段。
入道雲を背にしながら
たんぼの畦道を自転車で走り出した。
カラカラとなる車輪はどこか頼りなさげに聞こえてくるものだ。

蝉時雨に向日葵に
濃く映る自転車の影。
鼻歌まじりに坂道を下っていると、

ざわざわと木々のざわめきが聞こえはじめた。

キンと冷えた森の空気が頬に触れて、不意に自転車のブレーキに手をかけた。

見上げればそこは
古びた大きな神社だった。
木々の間から見える屋根は
所々塗料が剥がれて、長年の風格を現しているようだった。
護身木にも似た大きな杉の木が、神社へと続く長く苔むした石段を見下ろしていた。

「この神社、懐かしいな。」

ざわざわと杉の木を揺らす風が髪をかすめ、
遠い昔の記憶を蘇らせた。



オレには昔
お話好きのとても優しい祖母がいたんだ。

祖母は眠れないと駄々をこねるオレに、毎晩色んな話しをしてくれた。
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