夕焼け階段。
祖母の話すお話は
子供に話すには、どこかおどろおどろしすぎる所があった。

神無月の時だけ出現する狸の団子屋の話や、蔵に住み着く妖怪の話し、掛け軸の中の仙人が夜中に動く話しに、人間には入ることのできない神々の領域の話しなど、

祖母は毎日寝る前に
よく話してくれたものだ。

不思議とオレも祖母の話す妖怪達の話しは、怖いと思ったことがなかった。

逆に自分の知らない世界がこの世界に存在しているのかと思うと、胸の高鳴りさえ感じるのであったのだ。

ある風の強い晩。
幼い自分はなかなか寝付けず何度も寝返りを打っては、障子に映る木々の影を眺めていた。
ざわざわ音を立てて、ゆらりゆらりと左右に揺れる木々は
大きな怪物のようにこちらに近づいて来るのではないかと
恐怖で脅えはじめた。

こうなると
尚更眠れない。

脳が変に興奮して、全身の感覚が頭の先からつま先まで、徐々に研ぎ澄まされていく

いてもたってもいられず
布団から飛び出し勢い良く障子を開け放した。

"ブワッ"強い風が自分を通り抜けて部屋に入る、机の上の開きっぱなしのノートがペラペラとめくられ、壁掛け時計が風で揺れている。
月明かりに照らされた室内が、青白く輝いて
キーンという耳鳴りにもにた音が頭の中に反響し、ここから逃げ出したいという衝動に刈られて、一目散に長い板張りの廊下を走り出した。

踏み出すたびに床がミシミシと音を立てる、後ろから誰かが追いかけて来てるのではないか
恐ろしい想像が頭を巡り
今にも肩を得体の知れない何かに叩かれてしまうようなそんな感覚だ。
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