あの空の向こうに
【星を眺める少年ー28】


木と木の間で、一瞬だが遠くの方に黒い物体が動いたように見えた。





自分らの進行方向なだけあって、それは四人の目に映った。




「おい……今の…」




ダラがレオンに耳打ちをする。





レオンは体を動かさないまま答えた。





「ああ、もしかしてシュナウザーかもしれない…」





その言葉に全員が息を飲む。





ピリッと辺りに緊張感が走った。





そんな中、デラといったら泣きそうな顔をした上に、足も震えていた。





「に、兄ちゃん…僕、怖いよ…」





レオン達とそう年齢は変わらないのに、かなりの臆病である。





しかし、デラのそんな気持ちも分かってほしい。




いくつもの人々を残殺してきたシュナウザーの恐怖は、村人の誰しもが抱いている。





この場で逃げ出さないだけ、勇敢な方と捉えてもいいくらいであった。




数分が過ぎ、今度は先程よりも慎重かつ集中して前に進み始めた。





もう誰も、口を開こうとはしなかった
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