プレーン
「ナツメくーん、あれ共同トイレってやつだよねー?わたし初めて見たよー」
そんで初めて使ったー、とあっけらかんな女の声。
木戸の向こうで呼んだ名前は、確かに僕の名前だし、僕以外に他は無い。
あの声、あれは――こころだ。
なぜかは分からないけど、あの口ぶりはこころだと、寝ぼけた頭も良く分かる。
それくらい、僕に馴染んだこころの声。
ぎちぎちと立て付けの悪い木戸が上下に揺れたら、それに合わせて左右も動く。
いずれこころが現れる。
そのとき僕は、こんな姿でどうしたら。
「……着替えよう」
とりあえずそう、それがいい。
形が変われど僕の部屋。
一体誰がこうした事か。知らないけど、なったもんはしかたない。
「あった。」
セーフ。
変わったのはガワだけだ。
引き出しは水玉模様でも、中身はちゃんと正常、清潔。多分キレイ。
「ほんっとに……なんも覚えて無いよ。酒飲んだのかな?」
財布、チェック。
「大丈夫だ減ってない、けど……」
背にした木戸が、激しく揺れた。
「開かない!」
かんしゃくを起こした子供みたいに、木戸はガタガタ落ち着かずわめく。
わめかせてるのは、人だけど。
「ねぇ……それっ、それ、さぁ」
一旦上に持ち上げて押すんだよ、僕はジーンズを履きながら玄関へ向かう。
足がどうもつれるよりも、戸の安全が優先だ。こんなときでも大家は怖い。
そんで初めて使ったー、とあっけらかんな女の声。
木戸の向こうで呼んだ名前は、確かに僕の名前だし、僕以外に他は無い。
あの声、あれは――こころだ。
なぜかは分からないけど、あの口ぶりはこころだと、寝ぼけた頭も良く分かる。
それくらい、僕に馴染んだこころの声。
ぎちぎちと立て付けの悪い木戸が上下に揺れたら、それに合わせて左右も動く。
いずれこころが現れる。
そのとき僕は、こんな姿でどうしたら。
「……着替えよう」
とりあえずそう、それがいい。
形が変われど僕の部屋。
一体誰がこうした事か。知らないけど、なったもんはしかたない。
「あった。」
セーフ。
変わったのはガワだけだ。
引き出しは水玉模様でも、中身はちゃんと正常、清潔。多分キレイ。
「ほんっとに……なんも覚えて無いよ。酒飲んだのかな?」
財布、チェック。
「大丈夫だ減ってない、けど……」
背にした木戸が、激しく揺れた。
「開かない!」
かんしゃくを起こした子供みたいに、木戸はガタガタ落ち着かずわめく。
わめかせてるのは、人だけど。
「ねぇ……それっ、それ、さぁ」
一旦上に持ち上げて押すんだよ、僕はジーンズを履きながら玄関へ向かう。
足がどうもつれるよりも、戸の安全が優先だ。こんなときでも大家は怖い。