プレーン
いざ自分から声を掛けるとなると冷や汗ものだ。

僕らの会話の最初って、いつも彼女、こころから。
まだ僕から話し掛けた事って、無かった。そういや。

喉に吸盤持った言葉が張り付いてるみたいで苦しい。
でも、やらなきゃ。もっと苦しくなる。

「ね、ねぇあのさ!」

よし、やった!やれるじゃないか僕!

「何」

振り返ったこころが僕を見る。視線は迷う事無く僕を捕らえた。

予想はしていたし、常識として後ろ向いたまま会話するなんて失礼だから、振り返るとは思っていたけど、でもまさか、そんないきなり――あ、あれ……?

変だ。わるく、ない。
昔のいじめっこ達や先生みたいな目とは違う真剣なまなざし。
こう言うのが友達……っていうのかなぁ。なんだか見とれちゃうよね……。

「なんだよナツメ君」

変な奴、って感じで怪訝そうな彼女。でもそれだけじゃない、僕が何を言うのか知りたくて、僕に期待してる目だ。
うれしい。
もうちょっと見てたい。

……今だけは、こころが僕の事だけ考えてる。きっとそうだ。
なんだかいい感じ……こころが僕の名前を呼ぶ……こころが……。
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