君となら墜ちてもいいよ?
私も思わず、顔が緩んで、目元と口元だけ、フッと笑ってしまった。


その様子を見ていた、このクラスの担任の中田先生は、直ぐさま怒りをぶつける。


「谷川さん、少し緊張感が足りないんじゃないかしら?もっと気を引き締めて下さる?」


「はい、申し訳ありません…」


生徒の前で怒られた私は、顔が火照る。


初日から恥ずかしい。


母校なのにとんだ失態だ。


大学にも、どんな報告をされるか分からない。


お世話になる中田先生は、曲がった事が大嫌いだと言う。


目が釣り上がり、背筋もピンとしていて、シワ一つないパンツスーツに身を包んでいる。


見かけからも、その様子が分かる程だ。


とても厳しい先生が担当で、これから先、私は大丈夫だろうか?


初日から不安を隠せずにいた。


中田先生は社会科を教えている。


私も社会科の先生になるべく、母校に教育実習を頼んだのだ。


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