自失
記憶



真っ暗闇の世界。

ちょうど自分の胸のあたりだ。

粘土みたいな色。

まんまるつるつるしてる。

大きさは握ったこぶしくらい。

得体の知れない物体が、そこにあった。

なんだろ?

触ってみたい。

そっと人差し指でつついてみる感覚を想像してみた。

するとソイツは思ったより柔らかくてスライムみたいにぷよぷよ揺れた。

おもしろい。

けど、そう思った瞬間だ。

ソイツはいきなりトゲトゲの、いびつな形に変身した。

しかも硬い。

そして痛い。

胸の内側が悲鳴をあげている。

痛い痛い痛い、いたい!!

トゲがどんどん突き刺さってく。

助けて助けて。

ぱぱままおねえちゃん。

声が聴こえる。

「誰もお前なんか必要としてない」

「死ねば」

「消えろ」

「邪魔」

どうして…。

「樹ちゃんかわいそうだよね」

なら助けて?

そう思ってるなら助けて?

もうどうでもいい…。

痛みが消えた。

今度はスカスカの空洞だらけになったソイツ。

まるで私の心みたい。



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