涙が愛しさに変わるまで
夏羽さんと二人で会うなんて……。
あたしの頭はパニック状態で、『夏羽さん』という単語と『桐沢社長』という単語が頭をぐるぐるとまわってた。
「……帰ろ」
だいぶ座りこんで、やっと頭がまわるようになったからあたしは帰る支度を始めた。
だってずっとここに居たって答えなんか出ないんだから。
暖房や電気を消し、社長室の鍵をかけてあたしはエレベーターに乗った。
「……はぁ」
自然と出たため息。
ため息をつくと幸せが逃げるなんてよく聞くけど……
……じゃあ、あたしは今日だけで物凄い数の幸せを逃がしたのかな。