涙が愛しさに変わるまで


……あたしにそんなこと



「でき、ません……」



あたしがうつむきながら言ったら、目の前から低い笑い声が聞こえた。



バッと顔をあげると口元だけが笑って、目は完全に怒ってる夏羽さん。



「そうよね。真依ちゃんはお利口さんだもんね?」



夏羽さんがあたしを見ながらクスクス笑う。



……夏羽さん、こんな人だった?



「じゃあ真依ちゃん?会社……辞めるわよね?」



あたしの心臓がドクンと音をたてた。



……本当は嫌だ



だけど桐沢社長の家族を傷つけるわけにもいかない。


だって……あたしの幸せは桐沢社長が幸せなこと。



家族が幸せじゃなきゃ、桐沢社長も幸せじゃないに決まってるよ……。


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