涙が愛しさに変わるまで
あたしはそう言って走り去った。
今のあたしには桐沢社長を見るだけで心臓が壊れそうになる。
駆け込んだのは社長室の一階下のオフィス。
たくさんの人がコンピューターに向かって座ってる。
たまに見回りに来なきゃいけないからちょうどよかった。
周りの人を見ていたら、後ろから肩を叩かれた。
「片岡さん?桐沢社長はどちらに?」
あたしを呼んだのは水野亮(ミズノリョウ)。
この会社で課長をまかされているしっかりもの。
なんで水野課長が社長じゃないんだろうってよく思う……。
あんなSで気まぐれな桐沢社長と正反対だから。
黒いメガネの奥の瞳は綺麗な色をしてる。
「あ…たぶん社長室だと……」