涙が愛しさに変わるまで
「もう手だしたりしないから怖がんないで」
水野課長の目があまりにも真剣なのであたしは頷いた。
そうするとあたしに笑顔を見せてくれた。
「片岡さんの泣いてた理由って桐沢社長のこと?」
………え?
自分でもよくわからないあたしは水野課長に言われてはじめて気づいた。
あたしは……桐沢社長に冷たくされて泣いてるんだよね?
あたしがなにも言わないから水野課長がため息をついた。
「片岡さんって鈍いんだね?」
あたしが鈍い?
「鈍いですか?」
わからないあたしは水野課長に逆に聞いてしまった。
「うん。鈍すぎるよ」
メガネをクイッとあげながらあたしに言う水野課長。
「鈍いから自分の気持ちに気づいてない。」
水野課長の言っている意味がわからず、あたしは首をかしげる。
そんなあたしを見て、水野課長がまたため息をついた。
「まぁ、俺は気づいてもらわない方が嬉しいけどさ」
そういって水野課長はあきれたように笑った。
「桐沢社長のことどう思ってるのか、もう一回考えてみなよ」