涙が愛しさに変わるまで
それに気づいたのか、桐沢社長は笑った。
「好きだよ?」
「……ふぇ!?」
あたしは驚きすぎて変な声を出してしまった。
「仕事は意外にできるし、秘書として最高だと思うよ?」
………あぁ。
秘書として……か。
「あり……がとうございます。」
そういってあたしはうつむいた。
そんなあたしをおいて、エレベーターに桐沢社長は乗っていった。
エレベーターがスッと閉じてしまった。
……その瞬間、あたしの目からは涙がボロボロとこぼれ落ちた。
あたしね……わかっちゃったの……
……あたし秘書なんかじゃなくて……一人の女の子として好かれたいんだ。
あたし……桐沢社長が好きなんだ……。
たぶん気づいたらダメだって、どこかで思ってたのかもしれない。
桐沢社長には……奥さんがいるから……。
いつだって、あの人の薬指に光っているのは銀色の婚約指輪。
あたしは……桐沢社長を好きになっちゃいけなかったんだ……。