涙が愛しさに変わるまで


「相変わらず冷たいね?」


社長は口元を上げて笑った。



ニッコリではなく、なにかをたくらむようなそんな笑い方。



そしてそのままあたしの横を通り過ぎていく。



あたしはその後をついていくだけ。



後ろから見ても社長はかっこよくてなにもかもが完璧。



周りから挨拶されれば笑顔で返す。



でもそんないい人のわけないでしょ?



エレベーターに入った瞬間……。



「だりぃ……朝からうるせぇな」



そう言ってネクタイをゆるめる。



まぁ慣れてるから。本当はクールでドS。



それが桐沢誠だから。



「桐沢社長、今日は3時にお客様がお見えになります。」



あたしはスケジュール帳を開き言う。



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