涙が愛しさに変わるまで
「まー子。これ目通したから。」
桐沢社長はそういいあたしにさっきまで見ていた書類を渡した。
あたしは受け取り、ソファーに座って整理した。
なにも返事なんかせず、そのまま。
“とろい”とかひど過ぎでしょ……。
涙が目に溜まる。
あたしは根っからの意地っ張り。
負けたくないけど、涙だけは正直なんだもん……。
「……俺の事避けれるとでも思ってんの?」
低い声があたしのすぐ横で聞こえた。
「まー子?おまえにはおしおきしないとね?」
そういわれ、あたしの肩が急に押される。
いきなりの事で体が強張る。
上には、あたしを見下ろす桐沢社長。
あたしはカタカタと体が震えた。
桐沢社長はそんなあたしをおもしろがるように笑った。
「まー子?俺が怖いの…?」
耳元でゆっくりと囁かれる。