涙が愛しさに変わるまで
8:二人の分かれ道
「真依ちゃん…?」
あたしの後ろから声がして、とっさに桐沢社長から離れた。
そして声のするほうを見た瞬間、血の気が引いていくのがわかった。
だって……
「……夏、羽さん」
……桐沢社長の奥さん、夏羽さんが立っていたから。
部屋が静まり返る。
なにも言えないし、手や肩が震える。
「……なぁ、夏「誠?」
桐沢社長が何か言おうとしたけど、夏羽さんがそれを止めた。
……絶対怒られる。
……泣いちゃうかもしれない。
今までダメだと思った時に止めていれば……こんなことにはならなかった。