Tears in Love〜せつない想い〜上
「あの子可愛いね」


「・・・別に」


クールに友達にそう言う、


小学5年生の矢野先輩。

「兄貴。

あの子って俺のひとつ下?」


「そうだな。

啓のひとつ下だ。

優しくしてあげろよ、啓」


「分かってる」


優しく笑う
小学5年生の長瀬先輩。


この日から、
3人の物語は始まっていた。


そして、
この日に矢野 大地と長瀬 啓が

柳原 空に恋をした。


1時間後。


みんなが練習を終わりにし、
休憩している時だ。



「めーーーん!!」



大きな声で、叫ぶ空。


その声は、初めてだというのに

とても堂々としていた。

普通は恥ずかしくて、
小さな声で
本当に叫んでいるのか
分からないぐらいなのに、


空だけは違っていた。


恥ずかしさを捨て、
道場に響くぐらいの声を
だしていた。


道場にいる人達は
驚いて、空を見る。


そしてその中で、
矢野先輩と長瀬先輩は見る。


「・・・へぇー・・・できんじゃん」


タオルで汗を拭きながら

空を見る矢野先輩。


「・・・すげー」


独り言のように、
小さく呟く長瀬先輩。


「よしっ空!!休憩していいぞ」


「はい!!

ありがとうございました!!」


空は頭を下げると、
みんなのいる所へ行き、
座り込んだ。


そして、
空はゆっくりとお面を外した。


「・・・ふー」


小さく息を吹く空。


それを見る矢野先輩と長瀬先輩。


((可愛い・・・))


二人は心の中で、そう呟く。


空は、二人の視線を感じ、
二人の方を見る。


「・・・?」


不思議そうに見つめる空に対し、

二人は慌てて目線をずらす。


空はゆっくりと立ち上がると、
二人の元へ歩いてきた。


「あの・・・」


「「・・・!!」」


二人は驚いて、空を見る。


「矢野先輩ですよね?」


「・・・!・・あぁ、そうだけど」
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