Tears in Love〜せつない想い〜上
あのあと、
あたしは矢野先輩に

何も話さず、
家に帰って行った。


矢野先輩もあたしに
何も聞かず、教室に
帰って行った。



矢野先輩には
まだ返事をしていない。



なんて返事をしたら
いいのだろうか。



それに長瀬先輩のアレは
何だったんだろう。



いくつもの想いを
胸に抱いたまま


次の日になってしまった。



今日は学校はお休み。


けれど。
午前と午後に部活がある。


朝から夜まで・・・。


そして、
明日から三連休のため


今日から三連休までの四日間・・
違う場所で合宿がある。



なんで・・こんな時に。


合宿があるの・・・?



本当に気まずいよ。



学校。



「皆、集まったかー?」



新しい部長の清水先輩が
呼び掛ける。


「集まりましたー!」


翔がそう叫ぶ。


「じゃあ
一人ずつバスに乗れー!」


「「はーい」」



がやがやと、
荷物を持ってバスに乗る皆。


あたしは
後ろの方に立って、
皆が入るのを待っていた。



皆が入り終わると。


矢野先輩は、
バスから降りてきた。


「柳原、荷物貸して」


あたしの元に来ると、
手を差し延べた。


「え・・でも・・・」


あたしは困った表情で答える。


「・・いーから」


矢野先輩は、
あたしから荷物をとると


バスの扉に立ち止まる。

「・・・?」


「早くしろよ、柳原」


振り返ってあたしに
そう言う矢野先輩。


「あ・・・はい!」



たたたっ


慌てて駆け出すあたし。


バスに乗ると、
矢野先輩はあたしの鞄を

上に置いて、席に座った。


「隣座れよ」


矢野先輩は隣を指さすと、

あたしにそう言った。


周りがざわついた。


「あの二人って、
付き合ってるの!?」


小さな声で騒ぐ男子。


その中に一人黙って
見つめる長瀬先輩。


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