Tears in Love〜せつない想い〜上
「柳原ー!」


突然名前を呼ばれるあたし。


5時間前に練習が始まって、


今はお昼。



一人で黙々と
昼食を食べてたら、


矢野先輩に話し掛けられた。


「・・・どーしたんですか?」


「食べ終わったらさ、

一緒に稽古しない?」


矢野先輩はあたしの隣に
座るとそう言って来た。


「あ!いーですよ♪


あたしもちょっと
分からない所があるから


誰かに教えてもらいたくて・・
困ってたんです」



「じゃあ決まりな!」



優しく笑う矢野先輩。



この笑顔があたしは
ずっと前好きだった。



今は・・・。



「・・・・・」



黙り込むあたし。


それを見た矢野先輩は
急に真剣な表情で、
あたしを見る。


「・・・柳原って、
啓の事好きなの?」



「ぶっ・・・こほんこほん!」


ジュースを
口から出してしまったあたし。


咳を込むあたしを見た矢野先輩は


「やっぱり好きなんだ」


「・・・・・」


言葉が詰まるあたし。


「・・・じゃあ、

啓にも本気出させないとな」


「・・・・え?」


「何でもない。

ちょっと用事できたから行くね」


矢野先輩はそう言うと、
何処かへ去って行った。



「急にどうしたんだろう・・・?

あ!

あたしも早く食べて
稽古しなきゃ・・・っ」


急いで食べているあたしを
よそに何やら


新しい物語が
始まろうとしていた。




105号室。


・・・がちゃっ


「・・・!・・・なんだよ。

お前かよ、大地」



荷物整理をしていた長瀬先輩。



「・・気が変わった。


啓、やっぱりお前。


俺と正々堂々、
勝負しようじゃねーか。


・・柳原は俺が貰う」


矢野先輩の言葉に
ゆっくりと立ち上げる長瀬先輩。


「そーだな。


けど一つ言っとく。



この勝負、
ぜってー負けねーからな」
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