一人じゃないよ


綺咲は俺が帰るまで空いてる時間は、基本的に勉強をしているらしい。


どうやら風春から言いつけられているようだ。


俺が帰ってきたのに気づいて、綺咲はすぐに「おかえりなさい」って言ってくれる。


「…ただいま」


綺咲と暮らすようになって、“ただいま”を言うようになった。


それまでは一人暮らしだったし、言っても真っ暗な部屋に響くだけ。


言う必要が感じられなかったんだ。


今は綺咲がいるから言える。


笑顔で“おかえり”と言ってくれるから、それを返せる。




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