一人じゃないよ


寝ていたのか、美雪の声が記憶していた声と違う気がした。


「あの子って…綺咲のことか?」


『綺咲ちゃんって言うんだ。…綺咲ちゃんは亜樹の今の彼女?』


「え、綺咲が?……ははっ、だったら嬉しいんだけどな。まだ俺の片思いだよ」


俺と綺咲はただの同居人でしかない。


最近自分の気持ちを抑えられなくなりそうで怖くなる。


でも綺咲を汚したくないから必死に心に蓋をする。


「高校の時からの友達の妹で、頼まれて預かってるだけだ」


『じゃあ、あたしにもチャンス残ってるんだ』


「何言ってんだよ。美雪にはもうすぐ結婚する彼氏がいるんだろ」




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