一人じゃないよ


初めて聞く亜樹さんのその声の低さは、怒っていることを示していた。


よく見ると、眉間にもしわがよっていて思わず身が竦んだ。


ちゃんとベッドで寝てろって言われたのに、あたしがソファなんかで寝てたから怒ってるんだ。


たぶん買い物に行ったことにも気づいてるんだろうな…。


「責めてるんじゃないんだ。ただ綺咲のことが心配で……預かってる間に何かあれば、風春に殺されそうだしな」


亜樹さんはそう言って少し笑ったけど、あたしに笑う余裕なんてなかった。


ああ、やっぱりって思ったんだ。


やっぱりあたしは亜樹さんにとって、風春ちゃんの妹で預かってるだけの存在なんだって。





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