無口なDarling
「澄子」
猛よりも少しだけ高い声。
聞き覚えのある声。
昔は、この声が大好きだった。甘えるような声が、すごく好きだった、
私の元カレ。
「渉・・・」
ぎゅっと猛の腕を掴み、俯く。
「・・・誰?」
いつもより一層低い声でそう言った。
私に問いかけているのかと思い、顔を上げると、猛は真っ直ぐに渉を見つめていた。
「・・・そいつの」
問いかけられた渉は、猛から視線をはずす事無く喋り始める。
「そいつ呼ばわりすんな」
だけど、渉が話し始めようとした瞬間に猛が遮ぎった。
猛のあまりに低い声と強い視線に、渉も言葉を失う。
「猛・・・もう帰ろう?」
私が猛を引っ張り、向きを変えようとすると、
「澄子っ!」
ぎゅっと腕を掴まれた。
それは、猛の腕でなく懐かしい感触だった。
「やっ」
振りほどこうとしても、掴んだ腕の力は緩まない。
「おいっ!!「澄子っ・・・」」
猛が私の腕にある渉の腕を振り解こうと怒鳴った瞬間、
高校に入る前、
私達が別れたときと同じ
切なくて、とても寂しい声で私の名前を呼んだ。