無口なDarling
最近、澄子のやつはどうもおかしい。
前は昼休みになると弁当二つを持ち、俺の方へ走ってきていたのに最近手に持っているのは、パンかオニギリ。
もちろん。コンビニや購買で買ったもの。
俺の分まで買ってくるから、とりあえず金は渡すけど・・・
澄子は一ヶ月前ぐらいから、弁当を作って来ない。
最初俺は、朝起きるの大変なんだろう。とか材料費だってかかるもんな。とか。
あいつが作って来ない理由をそれくらいにしか考えていなかった。
あいつが作る弁当は、みかけによらず美味い。見かけはたしかに、ひどい時もある。
玉子焼きなんて裏は真っ黒だし、から揚げも明らかにでかすぎるし、色も黒い。ソーセージもタコの形にしようとしてるのは分かるんだけど、切込みを入れすぎておかしい形になってるし。
米の上にはノリで猛LOVEって書いてあるんだろうけど・・・ひらがなで書けばいいのに「猛」って文字を漢字で書くから全く意味が分らない。
だけど、朝早くに俺の為に起きて、真剣な顔してやってくれてんだろうな、って思うと愛しさを感じる。
だから本当はいつも食いたいって思ってる。食いたいと言うよりも、俺が食べるのをいつもニコニコと見てた澄子がみたい。
俺が食べる度にドキドキとしてるのが分る。俺が残さず食べるとほっとしたすっげー可愛い笑顔になる。
だけど作って来なくなって一ヶ月たつ。今までそんな事なかったんだ。朝起きるのが辛いとか、材料費がかかるとか・・・そんな事じゃないって思い出したんだ。
もしかしたら作らなくなった原因はあいつにあるのかもしれない。 同じクラスのあの女。あの女が澄子に言った一言。
゛猛ぅ。最近あのまっずそ~な愛妻弁当も無いんでしょ~?あはは☆私いつも猛のお腹心配だったもん!笑"
耳障りな高い声でそう言った。
むかつく。
なんであんな女にそんな事言われなきゃなんねーんだよ。