無口なDarling


別に追試が嫌なわけじゃない。(まぁ嫌だけど)


イライラの原因は目の前で繰り広げられている澄子と男の雑談だよ。



澄子は人一倍バカ(鈍感とも言う)で、大げさな位褒め称える。本人にしてみれば普通に接しているつもりだろーが、男は褒められるとその気になんだよ。



あーーーむかつく。



俺は無言で追試のプリントの山を終わらして、床に置いたカバンを持った。



「俺、先帰るわ。」



俺は短くそういい、教室のドアを開けた。



「猛っ・・・!」


澄子が困ったように、男の顔と俺の顔を交互にみる。



「あれ?柚木くん終わったのか?じゃあ澄ちゃんも帰っていいよ?」


何が澄ちゃんだよ。気色わりぃ。



「え!?いいの!?」


早く帰るのが嬉しいのか、男に顔を近づける。


・・・・イラ。


「今日は特別だからね」っと澄子の頭に触れた。


・・・触んなよ。



俺は無言で男の手を払い、澄子のカバンを持ち教室を出た。




「あっ猛!待って!・・・じゃあ将クンありがとう!」



そう言って俺を追いかけてきた。



いつもは手を引いてやるんだけど、(手を繋ぐとも言う)今日はなんとなくそんな気になれない。


だから、制服のポケットに手を突っ込んでいた。そんな俺に気づいたのか、



「・・・猛・・・手は??」



クイクイっとポケットに入った俺の袖をひっぱる。



「あ?」


「・・・手・・・」


本気で落ち込んでいる澄子を見たら、すっげぇ悪いことしたような気持ちになった。



はぁーー。



なんで俺ってこんなにこの女に弱いわけ?




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