【中編】ひとつの愛
「何してんの?」
いつの間にか戻って来ていた碧君に、机に頬をつけ半分崩れた顔を覗き込まれた。
あまりの顔の近さに驚いて後ろに下がってしまった。
「なっ、なっ、何もしてないよ?」
声も大きいし、
裏返ってるし、
噛んでるし。
最悪だよー。
『ふぅん』と、あたしを横目で見た碧君は鞄を持ち、帰る準備。
流湖ちゃんは言ってたけど……、一緒に帰ってくれるのかなぁ?
もし駄目なら車呼ばなきゃだもんね。
勝手に帰ったらパパがどんなに怒る事か。
一応、お嬢様。
心配症のパパは、毎日車を出すってうるさいんだよねー。
いつもは流湖ちゃんが家の前まで送ってくれるからいいんだけど。
でも……
こんな時は、凄く困る。
鞄を持ち、図書室からそのまま出ようとする碧君の後姿を見て、
ふぅっと小さく息をはき、鞄の中の携帯電話に手を伸ばした。
やっぱり、送ってくれるわけないよね?
舌打してたくらいだしね。
そう思って携帯を開き、通話ボタンを押す瞬間。