【中編】ひとつの愛
「さぁ?」
「そうっすか」
「愛姫に何かしたの?」
――ガタンッ
私が碧に質問した途端、教室から大きな物音。
愛姫だな。
「……別に」
多分、碧も気付いただろう。
愛姫が、そこに隠れている事に。
『見かけたら碧が探してたって言っておくわね』
わざとらしく答えると、頭を掻きながら行ってしまった。
ヒョコっと頭を出した愛姫を見ずに聞いた。
「愛姫からキスしたの?」
「……うん」
小さく答えた愛姫に目線を落とすと、私が聞くより先に口を開いた。
「どうしてだろう?」
「わからないの?」
「うん……」
こりゃ、長期戦だな。
碧、頑張れ!